日本工業大学 機械実工学教育センター様

日本工業大学 機械実工学教育センター様

WebサイトURL
https://www.nit.ac.jp/

学生が自ら実践し、つくり、学ぶ「実工学教育」を実現

日本工業大学 機械実工学教育センターでは、5軸加工機とCAD/CAMソフトウェア「hyperMILL」を活用し、学生が自ら実践して学ぶ“実工学教育”を推進しています。導入から約20年、アルビテクノロジーとの協働を通じて教育現場に根ざしたノウハウを蓄積し、学生が設計から加工まで一貫して取り組める環境を整えてきました。その背景と成果を紹介します。

基幹工学部 機械工学科/ 機械実工学教育センター センター長
教授 博士(工学)村田 泰彦様

基幹工学部 機械工学科 講師
博士(工学)
増本 憲泰様

機械実工学教育センター
主任 助手
足立 久則様

機械実工学教育センター
助手
平久 悦之様

導入事例/ソフトウェア

CADCAMソフトウェア/hyperMILL

事業内容

日本工業大学の学内において、本センターでは学生・研究員・教員・研究協力企業等に向け、以下に示すような教育、研究支援を行っている。

  1.  機械設計と機械加工およびこれらに関連する分野の実験・実習教育
  2. 教育、研究のための設備、機器の提供
  3. 教育、研究のための機器の設計、製作およびその指導
  4. 特色ある体験型実工学教育の企画、実行または支援
  5. オープンキャンパスなどの大学運営事業への参画

機械工作・設計に関する様々な要求に応えるべく、工作機械を約70台、CAD/CAM/CAEシステムが備えられたワークステーション75台、その他精密測定器などの設備を有する。

hyperMILL導入のきっかけ

5軸加工機とhyperMILLを導入したのは2006年頃で、当時としては教育機関では極めて先進的な試みでした。 担当教員が前職で5軸加工技術に触れた経験から、ロボット製作などへの応用を視野に、人間の頭部サイズの金属モデルを削り出すような自由曲面加工を行いたいと考えたのが始まりです。

その実現には高度な制御が必要であり、自由曲面を加工できる5軸加工機と、その能力を最大限に活かすhyperMILLの導入を当時の学長に提案しました。 結果として、教育・研究の両面で新たな発展の礎となりました。

導入初期の試行錯誤と教材づくり

導入初期は、教員も学生もまったくの初心者からのスタートでした。 材料の固定方法から加工条件の設定まで、どこにも答えがない状態で、取り付けと取り外しを繰り返しながら、試行錯誤を通してノウハウを蓄積していきました。

この過程から、研究室独自の紙ベースのチュートリアル教材が生まれました。 学生と教員が一緒に疑問を出し合い、失敗と改良を重ねながらまとめた教材は、今では教育の基盤となっています。 指導のやり取りそのものがチュートリアルとして機能し、現場での実践を通じて学びが深まるスタイルが定着しています。

シミュレーションと実際の加工を照らし合わせ紹介

学生主体の教育と成長

現在では、学生が自ら5軸加工機の起動から部品の加工完了までを一貫して行える体制が整っています。 他大学でも5軸加工機を導入する例はありますが、学生が単独で操作できる大学はほとんどありません。 日本工業大学では、訓練を受けた学生が材料の取り付けから製品完成までを自らの判断で行います。

また、衝突や干渉のリスクを回避するためのシミュレーションも学生自身が行い、教員と一緒に安全性を確認しながら加工を進めています。
こうした実践を通じて、学生は自分で考え、判断する力を養います。

教員は学生と同じ立場で課題に取り組み、まさに“共同研究者”のような関係性で学びを支えています。 この姿勢が、学生の自発性や創造性を引き出す大きな要素となっています。

「何をつくるか」「なぜつくるか」を問い続ける教育

センターの教育方針の根底には、「何をつくるか、なぜつくるか」という問いがあります。 かつて日本は「世界に追いつけ」を合言葉にものづくりを発展させ、今では世界中の製品を作る技術を持つまでになりました。 しかし、これからの時代は“追いつく”だけではなく、“お手本を示す側”としての発想が求められています。

そのためには、単に「作る」技術だけでなく、「何を、なぜ作るのか」という目的意識が不可欠です。 社会の中でどのように役立つのか、どんな価値を生み出すのかを考えながらものづくりに取り組む姿勢を、学生たちに伝えています。こうした理念のもと、センターでは「作るための技術」から一歩進み、「考えて作る教育」を実践しています。

実工学教育としての位置づけ

本センターでは、設計・加工・評価といった一連の工程を通して学ぶ“実工学教育”を重視しています。 「機械を動かすだけ」「設計だけ」といった部分的な知識に留まらず、ものづくり全体の流れを理解し、理論と実践の両面から学ぶことを目的としています。

他大学で理論中心の教育が増える中、日本工業大学では今も手を動かしながら学ぶ“現場感覚”を大切にしています。 設計から加工、成形までを自ら行うことができる環境が整っており、「ものづくりを一貫して学べる大学」として高い評価を得ています。

アルビテクノロジーとの長年の協働

アルビテクノロジーさんとは、導入当初から約20年にわたり連携しています。 ソフトウェアの提供にとどまらず、トラブル時の迅速な対応、勉強会の開催、機能アップデート時の講習など、教育現場に寄り添った支援が続いています。ソフトのバージョンアップごとに、どの機能をどう使えば良いのかを整理しながら学び直す機会を設けるなど、実践的な技術教育のパートナーとして大きな役割を果たしています。

今後の展望と人材育成

今後は、より多くの学生が5軸加工やhyperMILLに触れられるよう、教育環境の拡充を進めていく方針です。 特に、工業高校の教員を志望する学生も多いため、卒業後に高校の教育現場で5軸加工教育を担える即戦力人材の育成を目指しています。

また、これまで培ってきたチュートリアル教材を体系化し、理論と実践を結びつけた新たな教育プログラムに活用していく計画です。 「自ら考え、自ら動く」学びの姿勢を次世代に継承しながら、教育機関と社会の橋渡しを担っていきます。

日本工業大学のPR

日本工業大学は、幅広い工学を学べる学科・コースがそろい、自分が熱中できるテーマや分野に出会える、「夢中が見つかる工学の総合大学」です。

基幹工学部機械工学科での学びは、ものづくりの軸となる「エネルギーと制御」「ものづくり技術」「デザイン・設計」の3系統からアプローチします。3つの分野には、過去から受け継がれてきたものづくりの知識と技術が集約されています。機械工学の基礎となる知識と、実践的な技術を身につけ、さらに先端技術を駆使して、社会や産業界に役立つ研究・開発に取り組んでいます。

機械実工学教育センターでは、学生に対して機械設計・機械工作に関連する分野の実験・実習教育を実施する場として開放され、また研究員や教員による研究活動への支援を行い、本学の特色である「実工学」教育の充実に取り組んでいます。

樹脂成形の金型も内製化を実現

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樹脂成形の金型も内製化を実現:金型画像

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まとめ

日本工業大学 機械実工学教育センターでは、5軸加工機とhyperMILLを活用し、学生が自ら考え、挑戦し、実践する環境を築いてきました。理論と実践を融合させた“実工学教育”を確立し、次世代のものづくり人材を育成しています。この取り組みは、「何をつくるか、なぜつくるか」という根源的な問いを通じて、日本のものづくりの未来を切り拓く教育モデルとして注目されています。

インスタグラム https://www.instagram.com/mechamechanit/

【取材協力】日本工業大学

基幹工学部 機械工学科/ 機械実工学教育センター センター長 教授 博士(工学)村田 泰彦様
基幹工学部 機械工学科 講師 博士(工学)増本 憲泰様
機械実工学教育センター 主任 助手 足立 久則様
機械実工学教育センター 助手 平久 悦之様